Search

2012/01/18

Old Kluson Tuner Refurbishing Tips

 Old Kluson Tunerを簡単に機能回復レストアする方法を紹介します。

 オリジナルの、いわゆる"Closed Case"タイプのOld Kluson場合、ギヤ躍動部にグリースを塗布した後、ケースを機械でかしめてありますので、腕に覚えのある人は別にして、パーツをバラしてフル・レストアするのは素人には困難です。ですので、そのままの状態で、シャフト/ギヤ/ポストの不具合を解消して、より良い状態にする簡単な方法を紹介したいと思います。

 Old Klusonチューナーのギヤ・ケース内部封入グリースは、パラフィン・ベースのチープなもので、実は、このグリースの劣化/固着によって、機能低下と操作感が悪くなってしまいます。パラフィン系のグリースは経年劣化が早く、空気乾燥して比較的早期に固形化してしまい、その機能を失ってしまうのです。そして、その固形化した劣化グリースがギヤ部に不着することによって、それがギヤの勘合の障害となり、不具合を生じさせてしまいます。
 また、グリースの充填管理を怠り、もう何十年もそのまま使用経過したOld Klusonチューナーの場合、ギヤの勘合躍動部は偏摩耗して、最早使用出来ない状態にまでなってしまう個体も多いですが、そこまでの症状を来していない、比較的優良な個体の場合において、有効なTipsです。
*これは、ギヤ・ケース内部に樹脂ブッシュを使用していないOld Kluson向けTipsですので、最新型のレプリカKlusonにおいては非推奨ですので、よろしく

 用意するものは、灯油(ホワイト・ガソリンでもよいです)、充填用グリース、チューナーが収まる容器(出来ればステンレス製で、蓋があるもの)、その他、ウエス、ゴム手袋などだけです。
 灯油を使用しますので、作業中はくれぐれも換気に注意、火気厳禁です。

 先ず、容器にノブが上になるようにチューナーを収め、そこに灯油を注入し、浸します。

Tuners dip it into Kerosene(or White Gasoline)
灯油の量は、チューナーのケース部が完全に浸るくらいまで。
 メタル・ノブの場合、ノブ諸共浸かってしまっても問題ありませんが、プラスティック・ノブの場合は、化学反応で変形を来す恐れがありますので、ノブは浸さないようにします。(あるいは、完全にマスキングしておきます)

 しばらく浸すと、灯油が古くなったグリース、及び、金属に浸透しますので、時々、個別にチューナーを取り出して、シャフトを回転させて、内部のギヤ全体にこびり付いた汚れを掻き出させます。
 すると、ケースの隙間から、溶け出たグリースや、金属の粉、錆、その他の糟などが汚れとなって、ケースの隙間からポタポタ流れ出てくるのがわかります。
 何度か同じ作業を繰り返して、汚れが出てこなくなったようなら、後は再び灯油に浸したまま蓋をして、一晩寝かせます。(蓋をするのは、灯油を蒸発させないようにするのと、勿論、事故防止の為です)

 一晩放置した後、再度、シャフトを回して、内部の汚れが出切ったかどうかを確認します。
 このとき、既に手に感じるシャフトの動きが非常に軽くなっていることに気づく筈です。
 もう汚れがでなければ、チューナーを容器から取り出して、自然乾燥させます。
A dirt bleeds from inside of Tuners leave overnight

 これが残った灯油です。
 濁ってかなり汚れが出ているので、ギヤ・ケース内部を洗浄できたことがわかると思います。

 Old Klusonに使用されているグリースが固形化したものは、バターが古くなって固まったみたいな、黄土色状のものです。これが、案外しつこくギヤに不着しています。グリース注油穴からそのような固まりが見えるようでしたら、それこそが元凶なので、なんとしてでも取り除いておくべきです。
 もし、灯油ですべての汚れが落とせなかった場合、ホワイト・ガソリンで試すと、灯油よりも浸透性が高いので、パラフィン質の固形物は落ち易いです。が、揮発性が灯油よりも高く、油分が低いので、シャフトを回し難くく、扱い辛いです。
 また、アセトン、シンナー等の有機溶剤系でもパラフィン落としに効果があります。
 汚れの質、程度、状態により使い分けるとよいと思います。

Rinsing it and well drying
チューナーが十分に乾燥しましたらば、ウエスでよく拭き取って、ケースのグリース注入穴からグリースを少量充填します。
 この注入量が多過ぎると、ケースの隙間から大量に染み出してきてしまい、ギターを汚してしまいますので、必要最小限、ギヤ部に馴染む量に留めます。足りなかったら、後で足せます。
  シャフトを回転させながら、ギヤ勘合部全体に行き渡ればO.K.です。"String Winder"があれば、時間短縮です。(これを実装したギターに使用すると塗装を傷めるので、普段は絶対に使いませんが)
 ギヤ・ケースの内部の全体像は目視出来ませんので、目安としては、十分にシャフトを回転させて馴染ませた状態で、シャフトの両端がケースから出たところの隙間の部分から、グリースが若干染み出す程度が理想かと思います。
 ケースの隙間のいたるところからグリースが染み出してしまうと、明らかに充填量が多過ぎです。

Finally, inject new good grease.
I use and recommend "Copper Paste" compound type.
使用グリースについてですが、パラフィン・ベースのものは、前述の理由から、使用を避けたいところです。

 KOJIの場合、自動車やバイクのレストアも趣味にしていることから、その経験上、鉱物系で、銅粉含有のものを愛用しています。
 これは、主に自動車等の金属部品組み立て時に使用するもので、金属同士が擦れ合う部分の摩耗減少に大変優れており、銅粉が多く含まれているので金属に馴染みが良く、パラフィン系のように早期固形劣化することがありません。また、例え固形化しても、表面に薄い銅の皮膜を形成するので、滑走効果は持続しますし、また、防錆効果も高いものです。
 もうひとつ上等なもので、モリブデン・グリースというのもありますが、Klusonのチューナーにはあまりにもオーバー・スペックかと思われます。
 これらの鉱物系グリースは、自動車用部品を取り扱っているお店になら、在庫していないところはまずありませんし、高価なものではありません。手軽なチューブ・タイプもあります。

 鉱物系以外にも、シリコンですとか、PTFEですとか、グリースは他にも種類がありますので、拘りをもって試されるとよいとも思いますが、金属の摩耗防止/滑走/防腐、この三拍子に優れたものは、私的には鉱物系がベストと思います。
 メーカーでは、鉱物系グリースは使用していませんが、これは恐らく、その色の問題なのだと思うのです。鉱物系のグリースは、黒灰色をしています。外に染み出したときの見た目や汚れに繋がるものは使用を避けたいのだと思われます。また、パラフィン系グリースはコスト安なのです。早い話しが、安物です。

 さぁ、これだけのことで、チューナーのノブが軽々と回り、動きが驚く程スムースになったことがよくわかると思います。
 実際に装着して、弦を張ってみますと、ノン・スリップでストレスのない、Kluson本来の軽妙なトルク感が蘇ったことに気づく筈です。
 これによって、今後しばらくは(少なくとも10年くらい)メンテナンス・フリーで使用することが出来ましょう。(ただ、グリースの染み出しは気をつけて管理しておいた方が良いです)

 もし、チューナーのポスト、及び、シャフトに重度のガタつきがあったり(本来、少々のガタは新品時からあるので、良しとして)した場合、根本的に金属部の劣化、あるいは、ケースの取り付け不良かも知れません。そういった場合については、別な方法での処置が必要ですが、そのような状態にまで到っていない場合については、今回紹介したTipsで、大方のOld Klusonチューナーの機能と操作感を大幅に回復させることが出来ると思います。

 あとは、金属磨きで外側を磨けば、Refurbishingは完璧です。

0 件のコメント:

コメントを投稿