Search

2012/04/30

High-Pass Cap Of Rickenbacker Guitar & Bass

 RosewoodのTellieを手に入れてしまったので、しばらくはTellie系の記事が続きましたが、またもRickenbacker Bass登場です。


 わたしのRic Reissue RM1999 Bassには、SilverカヴァーリングのRic純正G & G社製Vintage Hardshell Caseが付属していましたが、通常、本体はこれまたRic純正現行モデル用のSKBのMolded Hardshell Caseに仕舞っています。それは、こっちの方が遥かに収まりが良く、また、軽量だからです。勿論、見た目的にはReissueのSilver Caseの方がオーセンティックで高級感もあり、好きですけども。
 ちなみに、Mr. John Hallのおっしゃるところによりますと、Rickenbacker社では、これら両方のCaseに現物のGuitarを収めて、大胆にも、自社ビルの屋上から落っことす実験をしたのだそうです。その結果、Vintage Caseは、Case自体の破損は大したことはなかったものの、中身のGuitarは折れていたそうで、SKBの方は、逆にCaseは割れて壊れてしまっていたが、中身のGuitarの方には破損はまったく見られなかった、とのことです。

 えーと……今回の話題はCaseのことではなくて……、丁度、タイムリーにMarcyさんがコメントをくださったところで、Rickenbackerの"High-Pass"("Low-Cut") Capacitorについて、です。

 1960年代のRickenbackerのGuitar/BassのWiring CircuitのRear Pickupの回路にはHigh-Pass Capが取り着けられていました。これはその後、廃止されていた時期もあったようですが、Vintage Reissue Modelsにはオリジナル踏襲で、同様に取り付けられております。
 このCapの意味(効果)は、Rear PickupのLow RangeをCutして、High Rangeを強調させる為のものです。値は、Guitar/Bass共通に.0047μFで、この値についてはずっと変更はないのですが、Capacitorのメーカーについては、時代によって変更があります。1960年代の中期頃は薄いBlue(Fenderの"Seafoam Green"みたいな)色の薄すべったい四角い形状のRadialタイプのものが使用されていました。これにはメーカー名の記載が無いので、どこのメーカー製だったのか、マニアの間でよく取り沙汰されております、わたしも独自に調べてはいて、だいたいの目星はつけてはいるのですが、今のところ、不明のままです。ただ、私的には、その形状から、Mylarタイプのものだったのだと考えてはいます。「マイラー・コンデンサー」の"Mylar"というのは、Polyester Plastic樹脂Filmの一種で、Dupont社の登録商標です。

 で、当Blogでは、電気楽器全般の音質に与えるCapacitor(コンデンサー)の重要性は大きい、という観点で述べさせていることが多いのですが、またしても、その実践でございます。

  この画像の上段のものが、わたしのRic Re RM1999 Bassにデフォルトで取り付けられていたもので、一般的な金属皮膜Registerの外観に酷似した形状のオレンジ色の小さなサイズのものです。一目ではRegisterと勘違いしそうなカタチですよね。耐圧は80v。メーカー名の記載がないので不明なのですが、SBE社製の"Orange Drop"の一種ではないかと思うのですが。或いは、Ceramicのタイプなのかも知れません。他の現行モデルにもこれと同じものが取り付けられているであろうと思います。

 2段目のものは、CDE社のAxial Filmタイプのもの。耐圧200v。年代は不明ですが、1970年代のRickenbackerで採用されていたのと同タイプの耐圧違いだと思います。N.O.S.品を入手して、しばらくはこれに交換していました。これは、比較的入手が容易なものです。

 三段目のが、今回入手したAjax製の、いわゆる"Blue Molded"タイプのもので、劣化のないUsed品です。耐圧は400v。AjaxのCapは、誤差が非常に低く、信頼性が高いと思います。ただし、入手は超困難です。
 Tone Capについては、同じく、Ajaxの"Blue Moleded"がOld '60s Rickenbackerオリジナル仕様ですが、High-Pass Capについては、前途のとおり、これがオリジナル仕様というわけではありません。

 これら、それぞれ耐圧は異なりますが、値はすべて同じ.0047μFです。

 Capの音質は、耐圧の大小でも若干傾向的に違いがあることから、耐圧の仕様についてもある程度重要視されてはいますが、Guitar/Bass用のTone Cap用としては、だいたい、どこのメーカーでも400vのものが使用されていることが多いです。ただ、耐圧が高い仕様のものは、図体も大振りになる傾向なので、コントロール・キャビティのスペースを優先考慮しての選択がなされていると考えられます。

 さて、その音質なのですが、同条件下でのチェックは出来てはいません。といいますのも、RearのHorseshoe PickupをOriginalに交換してしまったので、根本的な条件が変わってしまったからです。
 このHigh-Pass Capですが、当然のことながら、本来のBassらしい低音域がCutされることから、それを嫌って、取り外してしまうRic Bassオーナーもかなり多いです。Bassではありませんが、前回、わたし自身、TelecasterのHigh-Pass Capは取り外しましたしね。しかし、このRic Bassの場合、オリジナルの音質の傾向を維持したいということと、もうひとつは、Front PickupのウォームなトーンとRearのトレブリーなトーンのブレンドされたセンター・ポジションのサウンドこそが「らしさ」だと思っているので、個人的にはこのHigh-Pass Capの存在を重要視しています。

 デフォルトの80vのCapは、購入時からReissue Horseshoe Pickupとのセットでヒアリング……可もなく不可もなく。元々、Reissue Horseshoe Pickupはトレブリーな音質ではなく、図太い系サウンドのPickupなので、High-Pass Cap着きでもHigh Rangeが特に際立ったサウンドにはなっていませんでした。
 ……そして、CDEの200vに交換。しかし、聴感的変化は殆ど感じられず、これまた、残念ながら、無感動なものでした。
 それからその後、OriginalのHorseshoe Pickupに換装したわけですが、High-Pass CapはCDE 200vのままでした。それをまた今回、改めてAjax 400vに交換したのです。

今回の結果は、先の2種とは異なり、激変でした。明らかに音質がクリアーで、ブライトになりました。このAjaxの音と比較すると、以前までの2種のCapの音は、輪郭がかなりぼやけていた感がしてしまいます。Ajaxの場合、Low RangeがCutされたことによる、音色が薄っぺらくなった感はなく、芯のあるしっかりした音質です。そのブライトさは、喩えるなら、メタリックというより、クリスタル、といった印象。まるでReverbが付加されたかのような、自然なエアリー感があります。センター・ポジション時の、Front Pickupとのブレンド音色が艶やかで、特に素晴らしいです。そう、「艶感」という表現がピッタリな気がします。このCapはオリジナル踏襲ではありませんが、大変気に入りました! 

 うーむ、もしかすると、耐圧規格の大小も重要なのかも知れませんね。このHigh-Pass Capにおいては、耐圧が高いものの方が結果が良いかも。

 ちなみに、Ajaxの400vは、スペース的には、画像のような取り回しで4001系のキャビティ内に収めることは出来ますが、Used品の場合は、足を短く切ってしまってあることが多く、その場合は配置に工夫が必要になるかも知れません。

 RickenbackerのオリジナルのWiringの場合、PickupからのWiringは一旦、Switchを介して、その二次側端子からVolume Potへと結線されているのが普通で、Gibson系のWiringとは違い、VolumeとToneは独立して機能します。そして、Tone Capは、デフォルトではVolumeへ信号が渡る以前の、Switchの一次側端子上でPickupと直結結線され、Tone Potへ繋がっています。
 ちなみに、オリジナルのTone Capの値は.047μF 400vです。

 High-Pass用途のCapacitorの適用タイプ的には、Ceramic、Mylar、P.I.O.(Paper In Oil)、その他のFilm系、と、N.O.S.品でも様々ありますが、値を.0047μFに限定すると、案外、選択肢は狭まります。「高品位」という意味では、Silver Micaという手もあります。Micaだと、音質的にはかなりHi-Fi傾向になるかも知れませんね。

 今回のヒアリングは、Original Horseshoe Pickup(6.8k ohms)とセットでの感想です。Reissue Horseshoeでは、恐らく、音質的傾向は大分違った結果になると思われますので、その点、よろしく。

2 件のコメント:

  1. kojiさん
    ローカットコンデンサ、手元のajax(0.0056でしたが)も含めて色々試してみました。6ポジションのロータリースイッチでオイルコンからセラミックまで切り替えて確認しました。結果安いサンガモが案外良く且つ耐圧が低い方が荒れた感じで芯があるような気がしました.(Ajaxは定数が若干大きいので音が太かった…)マイラコンは未だ試してないので手に入れたら報告します.又、写真を拝見して気になるのはコンデンサの方向性です.セオリー通りローインピ側にoutsideを揃えたのだと思いますが古いリッケンの写真を見るとほぼ逆に接続してると思うのですがkojiさんはどう思われます?

    返信削除
    返信
    1. Marcyさん、コメントありがとうございます。
       おー、Sangamo、渋い選択。良いと思います!
       Capacitorの方向性ですが、本来のルール(というか、セオリー)では、Filmの巻き終わり側(表示のある側)をサーキット上のLow-Impedance側に接続するのが正しいということですが、このCapの接続方向のルールについては、諸説あり、その一番の理由は、誘引ノイズ対策なのですよね。で、わたし個人の考えとしては、ギター本体を電気楽器の入力装置として考えると、信号が通る出力部(Amp〜Speaker)までのサーキットをトータルで見ないと意味がない、と思うのです。そうした場合、サーキット内の全てのFilm Capacitorの方向が揃っていてナンボ、の話しになってくるのですよね。(エフェクターを使用するのなら、それも含めて)
       あとは、接続方向の向きの違いによる、音質の相違ですが、今のところ、わたしはその差異を確認(実感)できていません。
       ということで、このFilm Capacitorの接続方向の厳密さについては、わたしは今のところ特に殆ど拘っていません。ちなみに、わたしが確認した60年代のRickenbackerのオリジナル配線では、大多数がCapの"Outside"がTone Pot側に接続されていたので、今回はそれに倣ってみただけです。
       ですが、これは結構深い話題で、掘り下げると長くなるので、また次回に取り上げてみたいとは思っています。
       大変ナイスなコメント、ありがとうございました。

      削除