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2015/11/18

Beware of fake! - About vintage 1966 Tone Bender Mk1.5 - Pt. II

True Vintage 1966 Tone Bender Mk. 1.5 (Collection of mine)


Fact Details

 それでは、具体的に本物の1966年製Tone Bender Mk. 1.5と偽物とのDetailの相違点をわたしなりに解説してみたいと思いますが、これはあくまでもわたしの私的考察であり、併せて現時点での見解であることをくれぐれも先にご注意申し上げておきます。また、画像の無断転載転用をお断りいたします。
***Refuse the reuse without permission of the image***

1. Enclosure (Aluminium moulding case)

Casting version - これは当時の英国で流通していた汎用品を流用したものと思われ(恐らくRSから供給されていたもの)、Sola Sound製造のオリジナル品ではないと考えられますが、これには製造時期によって差異が確認できます。
 アルミニウム・キャストモールドインジェクション成型品の製造は、粘土等で作られた雄型を基に雌型(砂型)を合わせて作り、雄型を取り除いた空間に溶解させたアルミを流し込んで冷やして固める、という工程です。一定の数を生産すると、雄型が傷んでくるので、新たに雄型を作り直す必要があります。つまり、完成品は製造ロット時期によって形状が一部、或いは全体的に異なるのです。
 Tone Bender Mk. 1.5(以降"Mk. 1.5"と略称)は、Tone Bender familyで最も最初にこのアルミ・モールディング・ケースが採用された初のモデルで、その生産期間は非常に短く、生産台数も少数であったと言われています。その後に継承され、引き続き生産されたProfessional Mk. II (以降"Mk. II"と略称)、VOX Tone Benderにも同形状のケースが採用されてはいますが、これらに採用されているケースはすべて同じようで、実はそれぞれ別時期に製造された別物(別モールド)です。
Inside surface of enclosure - "Grey" primer coated and not "naked" aluminium!

 これは、ケースの細部を注意深く確認すれば判別可能です。ケースの製造時、砂型から外すときに湯口の余分な部分を削り取るために特定の部位に傷が入りますし、完成品には使用された砂型の痕がプリントされます。これらは同一の原型(雄型)からのコピー製造だから当然です。砂型痕はケースの内側Surfaceを見ると判りますが、Mk. 1.5のものは砂型の粒子は細かいが表面の状態はザラついており粗いのが特徴です。これらの微細な特徴は同じロットでキャストモールド製造されたものならば 「共通した痕跡」として遺っているわけです。
 本物と偽物とを見分ける決定的なポイントとして、EnclosureケースのCasting versionを確かめるのは重要です。偽物は後期に製造された「時期的に"Miss matching"なケース」を流用して贋作しているからです。

Mk. 1.5 layout of controllers
Difference in layout of controllers - Mk. 1.5とMk. IIは製造時期が近いため、使用されているケースの形状はよく似た個体が在ります(一部、極初期に生産されたMk. IIのケースはMk. 1.5のものと同じロットだったかも知れない)が、殆どのMk. IIに使用されたケースにはMk. 1.5のものと決定的な違いが確認できます。
 最も判別が易しいのは、コントローラーの穴の位置がMk. 1.5とMk. IIとでは違うという点です(僅かな距離ですが)。恐らく、Mk. II生産の或る時点で、Sola Sound自社での穴空け加工用のテンプレートが変更されたためと考えられます。
 これについては、Re-issue品を見ているとおもしろいことが発見できました。JMIとBPC製のRe-issue品のケースの雛形はMk. IIなんですね。だから、コントローラーの位置がMk. IIを参考に位置決めがなされたのであろうことが判ります。恐らく、彼らはRe-issue化にあたり、Mk. 1.5の現物は所蔵しておらず、確かめることができなかったのでしょう。しかし、D*A*M製のRe-issue品はMk. 1.5のコントローラーの位置を雛形にされています。つまり、これによって、D*A*Mでは本物のMk. 1.5の現物を手に参考にした、と推察できるのです。それでも、これら近年に製品化されたRe-issue品に使用されている母体であるケースは、同じく近年に製造されたまったくの「別物」であり( 外形サイズそのものが違います)、製品としてもRe-issue品として販売されている物ですので、このわたしの投稿テーマ外のサブジェクトであり、まったく問題ではありません。ただ、個人的には、D*A*M製のRe-issueモデルのその再現性への「拘り」には好感が持てます。

Thin flange - Later model enclosure has thicker flange to Mk. 1.5's
Shape of flange - もう一つ、見た目の形状で判り易い部分はケースのフランジ(外枠の縁取り)部の段付きの厚み、です。Mk. 1.5のものはこの部分の段付きが薄い形状ですが、Mk. II以降の後年製造のケースのフランジは厚めです。

Hammerite finish and Surfacer/Primer painting - 次、塗装について。Mk. 1.5は、いわゆる"Grey Hammerite"フィニッシュが施されています。これは自然な「痘痕状」或いは「フレーク状」の模様が現れる塗装です。これも、Mk. 1.5とそれ以降のものでは差異が認められます。Mk. 1.5のその特徴を簡単に表現すると、1. 銀色が濃い。2. 模様が粗い(細かくない)です。そして、そのSurfaceはそれほど凸凹しておりませんし、ザラついてもいません。非常に滑らかで艶さえあります。
 これらの特徴については、根本的には使用された塗料に違いがあると考えられるのと、Mk. 1.5の場合、Hammerite Finishの下処理として"Radish Brown"(これについては"Red"と表現されることが多いようですが)のPrimer Surfacerが下塗りされていることも色味が濃く現れている一因と考えられます。
"Radish Brown" primer surfacer - Under coat of "Hammerite" finish

 Primer Surfacerはアルミ素地と塗料との密着性を高める為の下処理ですが、これは手間と時間が掛かるので、後の製品ではコスト削減のために省かれているか、或いは、色がGrey色のものにチェンジされたようです。この処理でMk. 1.5の場合、上塗りのHammeriteの密着は強固で剥がれは少ないですが、上塗りの塗膜層は逆に薄いので、経年使用による摩滅によって下層のPrimer Surfacerの色がコーナー部などでところどころ露出し易いです。
 そして、Hammeriteの上塗りとしてClear Lacquerが施されている、或いはそれは無い、何れかは経年変化で判別が難しいですが、これも塗布されているとすれば、非常に薄く塗布されていると思います。このClearが経年変化で黄味掛かり、更にGrey(Silver)の色味を濃く見せているのかも知れません。何れにせよ、後年生産のモデルや近年のRe-issue品のそれとは外観上のアピアアランスが大きく異なって見えます。
 *再度、よくよく確認してみましたが、わたしの個体の場合、Clear Lacquerは無しと思われます。黄ばみはHammeriteの色の経年変化でしょう。
 これらの色味については、その他の物品の場合とも同様にインターネット上の画像では撮影、ブラウジング状況によって見え方が違うので判断が難しいですが、実際に並べて見比べて比較すればその違いがよく判ります(Replica品のGrey色は、青みが強いです)。

"Mystery Black painting" on bottom side...but...
Mystery Black inside painting - 内部の塗装ですが、外側と同じ色のPrimer Surfacerは噴かれてはいません。しかし、内側には何故かMatt Blackの塗装が極薄く、しかも「いい加減に」塗布されており、この主たる目的はよく判りません。「伝導塗料」との説にはわたしは懐疑的です。何故なら、それならばあまりにも処理がいい加減で、まったくその意味を成しておりませんし、わたしが確認できた他の本物と思われる個体の場合でも同様のいい加減さでした。しかし、よくよく観察すると、スプレーの的とされているのは、その内側の中心部や表面全面ではなく、裏蓋を閉じたときに「裏蓋からハミ出るケースのフランジ縁部分」であることから、わたしの独自の見解は、「裏蓋の色と合わせるための化粧的意味合い」なのではないかと思いますし、恐らくこれが単純明快に正解でしょう。このBlack塗装は、極初期のMk. IIのケースでも同様に塗布されたものが確認されているようですので、それが事実と仮定して考察すると、Mk. 1.5の場合、全ての個体でこのBlack塗装が施されていたと考えてよいと思います。何故なら、それがMk. IIの初期までは同様に引き続き継承されていた証明と考えられるからです。
But "Mystery Black painting" match to backplate colour simply

 また、内側はBlack塗装以前に、アルミニウム自体の素地の色調が後のものと比較して暗く、濃く見えます。これは、実はアルミニウム素地剥き出しなのではなく、また、前述のBlack塗装のムラによるものでもなく、腐食防止のためのGrey色のPrimer塗装が薄く施されているからなんです(裏蓋を留めるネジ穴を見れば、アルミニウム素地の色味が確認できますのでその違いが判ります)。この塗装はSola Sound社内加工ではなく、ケースのメーカーが仕上げ処理として施して納品された可能性が高いとわたしは思います。
 Mk. II以降のものは、内側がBlack塗装がされていないこともありますが、それだけでなく、後期のケースの内側は、アルミニウムの素地のままの無塗装の色調が明るいSilver色です。
 つまり、総合的に、また論理的に判断して、オリジナルのMk. 1.5のケースの内側がアルミニウム素地のままの無塗装であることは極めて考え難いと言えるかと思います。

Strong lettering print
Lettering print - モデルネーム等のLettering printについて。Mk. 1.5のこのプリントは、使用された油性インクが良質なのか、ガッツがあり、指先で少々擦った程度では剥がれ落ちない強力なものです。画像では判断が難しいですが、実際に現物を手に取って見れば、その違いは判断可能と思います。見てのとおりのBlackカラーです。
 贋作の場合、独自にレタリングをコピー製作して、シルクスクリーンでプリントしている筈ですが、インクの種類までは厳密に再現できていないでしょうから(おそらくオリジナルよりも薄い)、これも要チェック項目の一つかと思います。

Black painted backplate with battery cell holder - Non undercoated steel
Back Plate - 裏蓋について。Matt Black塗装のスチール製です。上記の項目と考え併せても、Mk. 1.5の場合、他の色に塗られた個体は無いと考えられます。こちらにはPrimer Surfacerは塗布されておりません。従って、経年変化によって塗装の剥がれが起こり易いです。形状的には四隅のCornerがRe-issue品の物は美しく"Round-Cut"されているようですが、本物ではこのように"Straight-Cut"形状です。センターにBattery Cell保持のためのHolder(Chrome)がアルミ・リベットで留められています。レタリング等の表示は一切有りません。

 ということで、一先ず、その外観のEnclosureの特徴から迫ってみました。
 偽物は、裏蓋を開けるまでもなく、上記の外観の幾つかのポイントだけでも注意深くチェックすれば判明します。併せて、内部の回路を確かめれば、かなりの高い確立で「本物には有り得ないちぐはぐな誤り」が幾つも見つけられると思います。
 ちなみに、ケース、裏蓋の何れにもSerial number等の記載、スタンピングはされておりません。
 稀に手書きナンバリングのシール等が、さも「らしく」貼られた個体がオークションに出品されたりしますが、それらは本物らしさを醸すための偽物の「演出」と疑うのが正解とわたしは思います。
 また、他の色(Goldなど)にFinishされた個体も在るとの不明の説がありますが、もし、そうならば、下地のPrimer Surfacer塗布の有り/無しをチェックすべきです。当時、何らかの理由で、違う色のFinishで生産された個体が在ったのだとしても、下地処理が省かれていることは同じ製造工程的に符号しません(Finishの色が違うので、わざわざPrimer Surfacerを剥がした? Primer Surfacerは上塗りの密着度を高めるための下処置なんですよ?)。更に、内側のPaintの有り/無しをも併せて不一致が認められれば、極めて贋作であることが疑わしいと言わざるを得ないでしょう。それらは、或いは、購入後のオーナーによるカスタマイズか、劣化のための補修処置ではないでしょうか。内側のGrey primerはエンクロージャー・メーカーによる納品前の仕上げ処理と考えられるので、「アルミニウム素地のまま」というのはMk. 1.5の場合、かなり疑わしいとわたしは思います。
 Mk. 1.5の生産数は、その実数は未だに不明ですが、後のProfessional Mk. II、VOX Tone Bender(UK & Italy made)よりも遥かに少ないのは、世界中のTone Bender関連スペシャリストが証言しているように確かです。そう度々USEDマーケットに出てくるものではないと考えられた方が良いと思いますし、その希少性と非常に高い価値を知るオーナーは、そう易々とは手放さないと思います(わたしを含めて)。故に「贋作で一儲け!」と企む輩がいるわけです。
 実は、一部伏せておこうかと考えた情報もあったのですが、そのような事案発生を危惧して今回実際にわたし所有の現物を見確かめつつ明かしました。

 わたしが知る限り、日本国内には、このわたしの所有品以外に本物のVintage 1966 Tone Bender Mk. 1.5は現存しないのではなかと思っておりますが、もし、同品を所有しておられるのでしたら、ご一報いただき、細部を互いにクロースチェックして検証できければ幸いですので、是非ご連絡をお待ちしております。
 気が向けば、また他のパートのDetailについても解説してみます。

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