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2013/09/21

beyerdynamic DT100 S400 headphones

 愛用のHeadphonesはGermany製beyerdynamic社のDT 100です。

 これは、日本ではあまり普及していないモデルなのですが、EU圏のRecording Studioでは常備が定番中の定番業務用Monitoring Headphonesでして、あのAbbey Road Studioで1970年代初め頃から常備されたことから世界中に拡散していったようです。レコーディング風景が撮影されたショットで海外アーティストがこのDT 100を着用しているのをよく確認できる筈です。

 わたしが購入したのは今から10年程前で、当時の日本の代理店の設定価格があまりにも高価だったので、海外の取扱店に発注して購入したものです(確か、送料込みで約半額でした)。
 これは主に自宅録音に使用してました。といのも、このDT 100の音質はかなり特徴的でして、中音域に集中特化してるんですよね。だから、今時の民生用Hi-Fi指向のHeadphonesみたいに上下の帯域が出ない。言わば、本当に美味しい帯域だけちゃんと出る。よく「DT 100は低域がまったく出ない」と言われるのですが(本家Beyerdynamicのカタログの製品情報にも「低域は出ない」と自虐的に書かれている!(笑))、それは当たっていて、実は的外れな評価でもあります。と言うのも、良い録音の音源再生ではDT 100でもちゃんと低域も出るんです(十分に、ではないが)。つまり「DT 100でしっかり聴こえてこない低域しかない音源には人の聴感にとっての美味しい低域成分が含まれてない」とも言えるんです。また、Aisingが不十分な新品のDT 100では特に低域が出ない傾向にあると思います。高音域に関しては、耳の悪い人にはあまり違いが感じられないレベルだと思いますが、やはりロールダウンしてはいます。中音域は正にDT 100の真骨頂で、特に人の声域帯は素晴らしいです。
 わたしは最近までAKG K240STを併用していたのですが、K240STだとDT 100に比べて低域が十分出ます。がしかし、例えば、K240STでMonitoringしてMasteringしてしまうと、中抜けで、上下がとっちらかった仕上がりになりやすいんですよね。つまり、最も美味しい中域に掛かった高・低域のイコライジング調整がし難い。しかし、DT 100だと、そういうことにならない。この辺りがDT 100の肝なところと言えましょう。逆に、AKG K240STやK271STは業務用というよりもHi-Fi用として十分使える感じです。なので、K240STはこの際処分しました。
 DT 100のデザインは、現代的な感覚では既にオールドファッションなルックスなので好みの別れるところでしょうが、個人的にはこの無骨な業務品的ルックスは好きです。Recording Monitor用として特化使用されているだけに、密閉型なので内外遮音性に優れていて、Vocalの録音使用でまったく問題ありません。特に軽量ではありませんが着用感も適度なホールド感で違和感がなく、長時間使用では若干疲れますが、中/短時間の着用にはまったく問題ありません。

 さて、長年つきあってきたわたしのDT 100、Maintenanceが必要な時期になったようです。
 というのは、Ear padの劣化です。DT 100のデフォルトのEar padはPVC製で、これは耳に当たる部分の表層コーティングが経年劣化で風化して、遂には表面が化学変化でネバネバしてコーティングが剥がれてくるんです。また、エレメント表面に接着してあるFoam padも同じく風化して黒い糟状のゴミと化してボロボロ取れて落ちてきてしまうのですよ。一方、Head padは経年劣化せず、長期実用に問題ありません。
 しかし、流石に業務用。DT 100の場合、分解整備可能で、その全ての単品Partsが常に標準で供給される体制なので、取り寄せて交換すれば問題ありません。
 で、またしても海外調達……と、ネットで調べると、最近、日本の代理店がTEACになったらしく、本体価格も若干お手頃になっていました。ほーほー、Replacement partsもCableとEar padに関してはカタログに掲載されていて、価格も内外価格差がありませんでした。ということで、ポイントも溜まるので、ヨドバシ経由で注文することにし、問い合わせてみると、「メーカーに在庫あり」だったので発注しました。


 Ear padは、デフォルト標準の"PVC" type以外に、Optionalで"Cotton Jersey" typeと"Plush" typeの3種が用意されていて、何れも同価格。今回はPlush typeにしました。これは本家のカタログでは"Tropical"とあり、高温多湿の日本に正にピッタリな仕様ですね。TEACのカタログ上では"ビロード"という表現になっていました。(Foam padは単体発注も可能ですが、Ear padにKitとして含まれています。)
 ちなみに、ヨドバシ発注では、メーカーに在庫ありにも関わらず、入荷まで9日掛かりました。ヨドバシの問題なのか、TEACがとろかったのか不明ですが、今時の流通事情では信じられん遅さでした。
Top: Worn PVC, Bottom: New Plush
さて、交換は簡単です。

● 劣化したEar padを本体からひっぺがし、ElementのFoam padも剥がします(Foam padは速攻剥がして捨ててしまったので画像ありません)。Element上に残る両面テープも剥がして、アルコールで清掃した状態が上の画像です。

● 新しいFoam padを新しい両面テープで貼り直します(両面テープは別途要準備)。これは特に強力に貼付ける必要はないです。

● Ear padを被せて装着して終了です。

● 完成。

 Plush typeはデフォルトPVC typeよりも遥かに着用感優! 気持ちよろす! 着用後の無音時にPVCのようにカサカサと嫌な音が気にかかることもありませんし、肌触りよろしく見た目の高級感もUpで大満足です。
 これでPVC製のように髪の毛が張り付くあのネバネバ強烈劣化は防げますね。恐らく、もう死ぬまで交換せずに済むでしょう(笑)。

 もう一つ、DT 100専用Cableの端末Jackは、昔はStereo 1/4 Phone Jackだったのですが、現行品ではStereo 1/4 Phone Adaptor付きStereo Mini Phone Jack仕様に変更されていました。ふむ、確かに最近はMobile機器が増えているので、その方が便利ではある……。ということで、ついでにNeutrik製の高品位Stereo Mini Phone Jack "NTP3RC-B"を調達して自主交換することにしました。

Left: Neutrik "NTP3RC-B", Right: Typical cheep injection molded one.
● 装着完了。
 現行品のデフォルトCable端末は、よくある廉価な樹脂Moldedなので、断線が起こり易いものです。上の画像右は廉価な一般的な製品の端末ですが、これと比較すれば、NeutrikはOuter caseがMetal整型なので遥かに頑丈であるのが解ります。こちらの方が高品位の仕上がりになるUpgradeです。
 Neutrikの製品は、どれも緻密に設計されており、信頼性が高く、仕上がり感も大変満足のいく製品ですが、このMini Phone Jackの場合、かなりSizeが小さいので、Cableのハンダづけ作業が1/4 Phoneよりも少々厄介です。手先が不器用な人は中々巧く製作できないかも? です。作業にはピンセットが必要になると思います。

● ただし、現行品はStraight typeですが、NeutrikではStraight typeは無く、このL-angle typeのみになります。色違いのSilverがあります。

 Mini Phone JackはStraight typeだと抜けやすく、L-angle typeの 方が相手側がCompactな物だと取り回しも良くなり良いのですが、1/4 Phone Adaptorを取り付けたときには逆に取り回し難いという欠点も。

● このStereo 1/4 Phone AdaptorはSony製で、以前から使用しているわたしのお気に入りのものです。これは"Screw-In"ではなく"Push-In" Fittingなので着脱が楽で、しかも、しっかり感が高いので簡単には抜け落ちたりしない良品なんですよ。ちなみに、現行品DT-100の場合は"Screw-In" Fitting使用なので、この"Neutrik & Sony"とは互換性はありません。

 Stereo Mini Phoneでも使用できるようにに交換……とは言え、わたしのDT 100はHi-Inpeadance (400 ohms)の業務用仕様なので、iPhoneなどのMobile機器用としてはマッチングが悪い(Mobile機器は大抵の場合Low-Inpeadance out仕様なので、このDT 100では大きな音量が得られない)です。常にVolume level調整はMax、て感じで実用ギリギリですが、使えないことはないです。その分、圧倒的にLow-Noiseで消費電力も少ないです。TEACでは、そのあたりを考慮して、主に16 ohms仕様のヴァージョンを販売のメインにしているようですが、DT 100の高Noise版で意味あるか? という疑問も。

 EUが本社であるメーカーも、最近では製造コスト軽減策から、蓋を開ければMade In Chinaだったりする訳ですが(AKGにはガッカリ……)、Beyerdynamicは未だにMade In Germanyを貫いていて、自社の製品管理姿勢に好感が持てる今では希有なメーカーです。

 ということで、DT 100は一般Hi-Fi向けリスナーにはまったく推奨できないモデルではありますが、わたしのように自宅録音したりするユーザーには必須なHeadphonesであります(あくまで400 ohmsヴァージョンの方ね)。

2013/09/17

Headstock shape - Rickenbacker RM1999 (4001S) Bass

My RM1999 Reissue
Sir. McCartney's "DA23" (Recent)

 Rickenbacker Bassのデザインで最も特徴的な部分と言えば、このHeadstockでしょう。
 しかし、Headstockのこのカタチ、おおまかなアウトラインは統一されてはいるものの、60年代当時はハンドソウンで材から切り出されていたためにShapingの個体差が激しいです。また、70年代からは両Wing部のWalnutのラミネイトがMapleに変更されて、Neckの構造自体も変更され、センターにWalnutをラミネイトする3 piece neckになり、Headstock部では5 piecesになりました(オリジナルはOne piece Maple neck)。
 Reissue modelの4001C64では、Sir. McCartneyの個体の"Mirror-image"ということで、残念ながら"Reverse" Headstockが採用されました。わたしはこのタイプのHeadstockは、その本来のデザインの美しさを大きく損なっていると思います。
 なので、歴代の幾つかのReiisueモデル中では、このRM1999 ReissueのHeadstockのみが60年代のオリジナル正調再現仕様と言えるものとなっています(V63は、根本的に再現性が低いので、私的に「論外」としました。)。

 で、画像でわたしのRM1999 ReisuueとSir. McCartneyの"DA23"と比較してみました。
 一目見ると、かなり近いShapeにはなっていますが、やはり微妙に少し違う部分がありますよね。
 実は、現在のRickenbackerではコンピューター制御のマシンで材木を切り出してはいるのですが、信じられないことに、未だに現行品も個体差が激しいのです(製造ロット、担当クラフツマンの違いによるものと思われる)。その中でもわたしの1999の場合、全体的にはMcCa卿のものにかなり近い個体ではないかと思います。

 DA23のHeadstockの特徴は、G string側のWing部のNutから始まる外枠のカーブのラインが鋭角なところです。ここまで鋭角な個体は、オリジナルでもまず無いので見分けがつき易いです。しかし、下の元々の状態と比較すると、そこまで鋭角ではないので、Original finishを剝離した際に若干木部まで削られた可能性が高いです。
 また、Walnut-Maple-Walnutのラミネイトですが、DA23はMapleの幅がG string方向に僅かに幅広です。
 TunerのPostの位置関係もかなり個体差でバラツキがあるのですが、この両者の位置関係はかなり近い方です。
 あと、Headstock全体の大きさ(長さ)にもバラツキが多く、オリジナル中でもDA23はNutから先端までが長めの個体なのですが、Nutが白色のものに交換されているので更に長く感じます。これもわたしの1999は比較的近似値に再現されている個体だと思います。
 Re-issue modelの4001C64は結構数多く生産されましたが、Headstockの全長はDA23に近いものの、NutからE stringとG stringのString Postの位置関係が寸詰まり気味で、そこから先が間延びしたような個体がかなり多くあります。

 上の画像比較で全体的な見た目の感じの違いに大きな影響を及ぼしているのは、実はあの"Rickenbacker" Truss Rod Cover (Name plate)です。このTRCもShapingの個体差が激しい上に、McCa卿のはLeft Handのため、演奏中にLogoの向きが上下正しく見えるように字面が逆向きのワンオフ製作のTRCになっています。実は、上の画像の状態は3個目のTRCで、最初にRickenbackerのFactoryでリペアされたときに交換されたものとも形状が違います。初代のものより全長が短く、形状も異なった別物です。最初のTRCはもっと長いサイズのものでした(元々オリジナルで着いていた初代TRCは下の画像参照)。また、Screwの位置がわたしのRM1999 Reissueとは若干違います。

 また、これはHeadstockのShapingとは無関係ですが、
1. DA23ではKlusonのTunerが少なくとも一度交換されており(恐らく、リペア時に)、現在は1970年代のKlusonが取り付けられています。KlusonのBass用Tunerは、1960年代と1970年代のものではString postの形状、Gear screwのHead形状、Rivetの位置と形状など、細部のディテールに違いがあるので見分けられます。
2. DA23には"Zero-Fret"が付加されていることで有名ですが、これは、英国のRepair shopで付加されたようなのですが、本来のFret boardのEndに接ぎ木してFretwireが打たれているので(接ぎ木はScrew 2本で接着補強されている!)、その分、Headstockは短く見える筈なのですが、その時に交換された白いNutの効果であまりそうは見えません。
 ちなみに、何故、DA23にZero-fretが付加されたのか? というと、元々、Headstock-angleが緩い個体だった上に、経年変化で弦の張力に負けてしまった結果、Nutにテンションが掛からなくなったことの対策だったそうです(これはOld Rickenbacker Bassによくあるトラブルの一つです)。他の画像で確認すると解るのですが、DA23のHeadstock-angleはFret boardとほぼ平行(あるいは、それ以上)になってしまっています。そうまでなると、現実的にはNut上での弦のテンションが弱すぎてTuningにすら困難な状態でしょう。現在、彼がDA23を表立って使用しなくなった原因もそのあたりの不具合にあることは間違いないと思われます。
My RM1999 Reissue
Sir. McCartney's "DA23" (Early days)

 で、上の画像ではMcCa卿のリペア以前の時期の在りし日の本来のDA23の姿を捕らえた画像で比較してみました。
 TRC先端のScrew位置以外、ほぼ近いShapingであることが解ると思います。実は、RM1999 ReissueのTRCはかなりSizeが大きかったので、わたし自身がReshapeしました(再三加工し、かなりの面積を切削して近づけました)。でも、LogoもBoldとRegularて感じの差異がありますよねー(不満)。

 ということで、今回はあくまで表面からの見た目だけで比較してみましたが、このHeadstock、厚みとAngle(角度)にも個体差のバラツキがあり、それらもまた機会があれば取り上げてみたいと思います。